世界最高峰からの朝日

子どもの頃、母から「あなたは文章を書くのが上手ね」と
褒められたことが、私の“書くこと”への原点です。

その一言が嬉しくて、
気づけば文章を書くことが大好きになっていました。

今では広島ペンクラブの一員として、
年に2回、作品を掲載していただいています。

広島ペンクラブは、
1945年の原爆投下で何百年も培ってきた歴史や文化を失った4年後、
作家や新聞社・報道関係者、大学教授などの尽力によって設立された団体です。

あの日失われたものを、言葉で少しでも残していくために。
2025年最新号です。
ぜひお読みいただけたら嬉しいです。

✨✨✨

世界最高峰からの日の出   多田多延子

私は十歳で、本当に突然交通事故に遭い、
人の命が驚くほどあっさり終わることを知った。
明日は今日の延長ではない現実を十歳で知ってしまった。
そして、人生は突然途切れる可能性があると心に刻んだ。
しかし、不思議なことも起こった。
2週間の入院中、授業に出ていないのに、
突然テストの成績が広島県で7番になっていた。
成績が急に良くなったことで中学受験に挑戦し、合格した。
瀕死の私を救ってくれた医師は「奇跡」と言い、
海外の友人は「セカンドライフ」だと表現した。
それは、輪廻転生の再生期間を飛び越えて、
次の人生を生き始めたかのようだった。
十歳の私が人生の儚さを悟ったのは苦しい経験だったが、
だからこそ「今」を大切にする習慣が身についた。
もしも明日突然終わりが来たとしても、
後悔しない生き方をしようと誓った。
だから、心から望むことはためらわず言葉にして、
叶える努力を惜しまないと決めた。
この姿勢は、私にとって生きる力そのものになった。
もしこの経験がなかったら、
起業して一年に地球を四周することはなかったと思う。
そして私は、限りある時間を大切にするために
「死ぬまでにしたい事100個」を紙に書く事にした。
その100分の1が、ハワイ島にある世界最高峰のマウナケアで
最高の日の出を鑑賞する事だった。
海底から計測すれば世界一の高いこの聖地は、
冷たい空気と澄みきった空に包まれ、星空も息をむほど美しい。
ここで見るサンライズは格別で、心の奥底まで光が差し込めた。
振り返れば、私の人生は「書き続けてきた願い」が
ふとした瞬間に魔法のように叶えられる連続だった。
マウナケアで見た日の出は、私の心に新たな希望を灯した。
地平線から昇る光が世界を一瞬で染め上げるように、
人生にも光が差し込む瞬間があるのだと確信した。
思い描く夢を言葉にすれば、
不思議な縁が背中を押してくれることがある。
だからこそ願いを書き続け、実現への糸口を探す。
これが私にとって、生きる喜びの源泉でもある。

関連記事